函館の老舗店・観光スポット

2000-12-15 vol.218

函館の老舗!創業100年を超える店と観光スポット

100年…。この街には100年間、人々の暮らしを見守り続けた建物があります。この街には100年間、人々の暮らしを支えてきた企業があります。また、この街には100年間、人々に親しまれ続けた伝統の味があります。それらは皆、伝統という言葉のもとで守られ、受け継がれ、函館の20世紀の歴史を物語る財産として今日に存在しています。100年単位で続いているものをひと言で語るのは比較的容易なことですが、それぞれを守り続け、継承してゆく人々の努力と情熱は並々ならぬものがあり、これからの世紀を生きる私達にとっても、そこから学ぶことは限りなくあります。

函館の老舗!創業100年を超える店と観光スポット

20世紀の函館…港街100年の群像…最終節「継続」

高龍寺高龍寺

シリーズ「20世紀の函館」の最終節となる今回のテーマは「継続」。函館でこの100年間続いている企業や老舗の味にスポットを当てるとともに、100年間にわたる教育の歴史に着目してみました。あの会社が、あるいはあの店が100年も続いているのか…とあらためて知る人も決して少なくないのではないでしようか。

郷土資料館(旧金森洋物店)郷土資料館(旧金森洋物店)

全3回のシリーズでお届けしたこの企画は、日頃、函館エリアのさまざまな情報を提供することを業種としてきた私共が、新世紀の市民の暮らしを提案する中で、“過去100年の函館の市史の中にこそ、新しい100年を豊かに生きるヒントがあるのでは…”と取り組んできたものです。21世紀を目前に控えた今日、私達の暮らしは豊かで便利なものになったと言われており、また、市民一人ひとりは自由で快適な生き方ができるようになったとも言われています。しかし、暮らしを便利にしてくれるテクノロジーや、自由な社会がもたらした個人主義というものが、私達の現代社会の大きな歪みになってきているというのも事実です。世紀の節目を生きる私達は今こそ、故郷の100年の市史を振り返り、そこに生きた群像を繙くことで、時代の流れとともに失われた何か大切な事を再認識する必要があるのではないでしょうか。

函館どつく函館どつく

文末になりましたが、今回のシリーズに多大なるご理解とご協力をいただきました函館市史編さん室、市立函館図書館、その他取材協力いただいた関係者各位様に心よりお礼申し上げます。

写真=およそ100年の歴史を持ち、函館市内の20世紀を見守り続けた市内現存の建物(一例)

この街に貢献し続ける…創業100年以上の老舗

千秋庵絲本家

千秋庵絲本家

万延元年(1860年)、『千秋庵総本家』の歴史がはじまる。昭和初期に作られた元祖山親爺やどら焼きは、いまでも根強い人気。そこには質の素材と手間が生む菓子の絶妙な味がある。伝統を守りながら、時代とともに変わる味覚に研究が続けられ、これからも続いてゆくだろう。

●宝来町9-9
Tel:23-5131

株式会社五島軒

株式会社五島軒

『五島軒本店」は、ロシア料理とパンの店だったが、その頃からメニューのなかにカレーがあった。明治19年から、フランス料理と洋食の店として名を広めてゆく。現在も残っているロシア料理には、121年の歴史を感じることができる。

●末広町4-5
Tel:23-1106

金森商船株式会社

金森商船株式会社

『金森商船』の第一歩は、明治2年の金森洋物店の開業。輸入雑貨を扱い、西洋の文化を取り入れた。建物は市に寄贈され、郷土資料館として当時の様子を伺える。現在の金森商船は赤レンガの倉庫、金森洋物館、函館ビヤホール、かねもり亭などを運営している。

●末広町14-12
Tel:23-0338

さくらば紙店

さくらば紙店

明治元年、弘前から来函した初代が開いた『さくらば紙店』ののれんは代々血のつながらない人たちで守られて4代目に。紙の専門店として今もお客さんに信頼されている。老舗の証しはすりへった紙包丁。もともと10センチ位の刃が使い込まれて3センチほどになっている。地域に親しまれているコツはお客さんとのきめの細かいコミュニケーション。

●杉並8-20
Tel:51-7239

赤帽子屋

赤帽子屋

1886年(明治19年)創業の老舗『赤帽子屋』の初代は東京から帽子の制作技術を持って来函し、店を構えた。昔は鳥打帽や中折れ帽など男性用の帽子が主だったが、戦後の洋装の普及とともに女性用が増えたという。現在はカジュアルな既製品と共に、サイズや個性にあわせたオーダー帽子を作る函館で唯一の帽子の専門店である。

●松風11-3
Tel:22-2954

やすけフーズ

やすけフーズ

明治29年創業の「やすけフーズ」は東京から来た寿司職人が開いた『梅乃寿司』が前身で函館に江戸前寿司を広めた。その後、寿司の大衆化を目指し「持ち帰り寿司」を企画し、また昭和62年には「回転寿司」をはじめ、現在市内に9店舗を持つ。安くて早くて明朗会計をモットーに老舗の看板を守る寿司屋さんである。

●日乃出5-18
Tel:31-0200

100年続く伝統の味

佐々木豆腐店

佐々木豆腐の無添加豆腐

創業明治16年から変わらぬ製法で、現在もコツコツと豆腐作りに励んでいる宝来町の『佐々木豆腐店』。「豆腐作りは奥が深くてね、本当に納得のいく味の豆腐ができるのは、一生に1度か2度だろうなぁ。豆腐作りにプロはいないっていうけど、その通りだと思うよ」と、しみじみ語るのは、4代目職人佐々木範和さんと5代目職人の佐々木孝さんだ。作っているのは木綿豆腐のみ。原料は国産大豆で、添加物も使用していない安心の一品だよ。一丁150円で、丸井今井デパートの地下食品売場でも販売しているので、行ってみてね。なお、毎週水曜は、寄せ豆腐(150円)も数量限定で売っているよ。寄せ豆腐は宝来町の佐々木豆腐店でしか、扱っていないのでご注意を。確実に欲しい人は、電話予約してね。

●宝来町4-10
Tel:22-6732

有限会社宮原かまぼこ

丸井今井デパート地下の有限会社宮原かまぼこ販売コーナー

豊川町に製造工場を持つ『宮原かまぼこ』は、創業明治16年の老舗。現在、作っているのは、水産練り製品製造1級技能士の宮原秀夫さんで、5代目の職人だ。「知名度の高い“宮原かまぼこ”の看板に、甘んじることなく、いい物を一生懸命作り続けたい」というここのかまぼこは、素材厳選で添加物を使わないという体にやさしい逸品。昔から人気のある「板かまぼこ」1500円は、でんぷんも防腐剤など添加物も一切使用せず、原料にワラツカ、グチを使用しており、お正月料理に欠かせない高級かまぼこだ。本町の「丸井今井デパート」の地下食品売場かまぼこコーナーで作りたてを販売しているので、行ってみて。

●豊川町2-18
Tel:22-0765

学校の100年

住吉学校明治11年に民家を借りて開校した住吉学校

明治5年に学区制が施行され、その頃、函館でも続々公立の小学校ができていった。函館で最初にできた小学校は明治11年開校の住吉学校で、現在の青柳小学校である。その後、明治13年湯川小学校、15年弥生小学校、25年亀尾小学校、34年亀田小学校と相次いで開校していった。上級学校は明治20年に庁立函館商業、28年には函館中部高校の前身である庁立函館尋常中学校、38年庁立函館高等女学校が、44年には函館工業が開校した。公立の学校ができる以前に私立の学校が多く創立されたが、そのほとんどは女学校で、遺愛。聖保祿(現白百合)、六和(現大谷)などが明治10年から20年代に多く創立された。函館には100年以上の歴史をもつ女学校が多く、函館の女子教育の礎を築いたのは私立の学校といえるだろう。

今年で創立122年を迎えた青柳小学校の前身、住吉学校は後に函館区長となった常野政義氏の呼びかけで、住吉町在住の有志が資金を出しあって開校した。当初は民家を借り、生徒は2学級71人だった。その後昭和11年、青柳小学校と改名。100年の歴史の中には谷地頭小学校、汐見小学校との統廃合があり、現在に至っている。青柳小学校100年の変遷は、そのまま函館の繁栄の歴史と重なり合うもののように思える。

【協力】
青柳小学校
【参考文献】
函能教育年表
青柳小学校篇創立
百周年記念誌「青柳」