スピードに束縛され、習慣を狂わされ、ファーストフードを食べることを強制される現代社会の中、スピードからの解放を目指し、消えゆく恐れのある伝統的な食材や料理とそれらを提供する生産者を守るとともに、子供達や消費者に味の教育をしようという指針のもと、今では世界中に7万人以上の会員が活動をしていると言われています。
日本ではまだまだ、スローフードの本来の意味を誤解している人が多いという声もありますが、それでも、郷土料理や伝統的な日本酒、地方の食材を見直そうという動きは各地で展開されています。また、我が国には、このスローフードの考え方に類似した素晴らしい言葉もあります。「身土不二(しんどふじ)」【人と土は一体であり、人の命と健康は食べ物で支えられ、食べ物は土が育てる。ゆえに、人の命と健康はその土と共にある】。つまり、自分が生まれ育った場所でできた旬の食べ物を食べることが健康の秘訣であるという考え方です。
食べ物に限らず、日々を生きることにスピードと合理性が要求されている私達は、自然の中で自分が生かされているのだということを忘れ、利便性を求めるゆえに、本来は私達自身と一体であるはずの大地を破壊し、古人が伝えてきた伝統文化や習慣を重んじることも少なくなっているのかも知れません。
「スローライフ」。それは決して、ただ漠然と、のんびり暮らすことではないと思います。自然のリズムの中で暮らし、その恩恵に感謝することこそ人間らしさの真骨頂であり、それは、昔に比べ少しずつ狂いはじめた健康や精神的なことなど、人間のサムシングを修正してゆくための手がかりにもなるのではないでしょうか。
ここ函館という街が、周囲の美しい自然と調和し、北の先人が残した地域文化や遺産を重んじ、人に優しいおおらかな街であるために、青いぽすとはスローライフを提案します。
【スローフードの愉しみ】シックな食の空間にゆっくりと時は流れる…
Hakodate Dining 備後屋 びんごや
古都・京都の町屋のような木戸をくぐるようにして店内に入ると、奥行きのある落ち着いた空間が目の前に広がる『備後屋(びんごや)』。和紙のランプシェードからほのかにともる灯りや、木をモチーフにした和の設えが、シックな食の空間を演出している。
函館を中心に近隣の食材を使用し、伝統料理の手法を使いながらオリジナルな味を創作した新和食のメニューは、まさにスローフード——。例えば、「朝イカの昆布じめ」は函館近海でとれたイカと南茅部の昆布で作ったもの。「玉ねぎの丸焼き」は、玉ねぎを丸ごとオーブンでじっくり焼き、自家製のしょう油をかけて食べるという、玉ねぎの自然な甘みが美味しい1品。スローフードの考え方にぴったりな地酒と焼酎も充実。ここでは、ゆっくりとした時間が流れている…。
営業時間は午後5時30分〜午前1時。年中無休。駐車場有。
●本町28-15
Tel:31-5555
【路面電車を見直す】10月2日から電車サミット
電車は乗用車に比べ二酸化炭素の排出量も少なく、エネルギー効率も車やバスよりすぐれているなど、環境に優しい乗り物です。車窓の景色をながめながら電車にゆられると、何かゆったりした気分にもなります。もっと電車を利用したいものですね。
この10月2日から5日まで、全国の路面電車事業体、愛好・支援団体が集まり、路面電車について語り合い、交流を深める『電車サミット』が函館市で開かれます。2年に1度の開催で、今年の函館が第6回目。期間中、講演、分科会のほか、「シネマとトーク」「スタンプラリー」「テレビゲーム大会」「パネル展」「絵画コンクール」など盛りだくさんの催しが実施されます。
問い合わせ先は
同実行委員会事務局
Tel:51-3858。
【スローマップを手に入れる】
今年4月から、函館駅や元町の観光案内所などで配布している『ハコダテ・スローマップ』(無料)は、西部地区を中心に、観光ガイドには載っていないような、自然豊かな場所や環境に優しい店や、じっくり楽しめる散策ルートなどを紹介。
地図には「星を見る場所」「朝日・夕日がきれいな場所」「伝統的な街並み」などといった約200個所の情報を、色分けされたカラフルなアイコン(絵文字)で示しているのが特徴。
制作したグループ、node(ノード)0138プロジェクトの代表・渡辺保史さんは「地図を見た人が新しい発見を書き加えるなど、進化してゆく地図にしたい」とPR。
今まで忘れかけていたもの、見過ごしていたものを、1人ひとりがゆっくりと発見できる地図といえそうだ。http://www.slowmap.org/
旧暦カレンダーをゲット!
(社)大阪南大平洋協会では“元祖”旧暦カレンダーを毎年発行しています。1冊1600円(送料・税込)。10月初旬より2004年分の発売を開始。
お申し込みはFAXでどうぞ。
●大阪市北区豊崎3-8-5-1001
Tel:06-6376-1151
Fax:06-6371-9337
【道南在住のスローライフ愛好家達】自然を活かしたエネルギーで生活
ピーター・ハウレットさん
南北海道自然エネルギープロジェクト代表者のピーター・ハウレットさん(48才)。函館市内の小学校に風力発電を作るなど、自然を活かしたエネルギーを使って生活をしている人物です。
「いつでも、どこでも、どれだけでも、自分の欲望のままの便利さに慣れてしまった私達ですが、人間も動物と同じく勘の働く生き物。自然の流れに合わないことをしていると、体は何か違うと感じはじめ、それがストレスとなってあらわれるような気がします。体のサインに素直になって、スローライフをはじめると便利さとは違う、楽な気持ちで生きられるのではないでしょうか?」
上の写真は、ピーターさんが講演依頼を受けた際に、OHPの替わりになるものを探していた時にひらめいた「スローエネルギープロジェクター」。影絵のように浮き出る絵、みつろうキャンドルのやさしい光でムードもあり、ワクワクしながら話を聞けそうだ…。
【道南在住のスローライフ愛好家達】自然と共に生きるスローライフの真骨頂
飛塚優さん
飛塚優さんが市内東山町の、クマ笹の生い茂る土地を手に入れたのは18年前。子供の頃からの夢だったログハウスを2年越しで完成。丸太を切り出し、山の上まで運び上げ、屋根以外はすべて1人で作りました。その経験が、サラリーマンをやめ自然と共に生きる決心に繋がったのだそう。その後、自然素材だけで作った自宅を新たに建て、利益・効率・スピードと対極にある暮らしをはじめました。山から切り出したほだ木でしいたけ・なめこ・ヒラタケを栽培し、畑ではきゅうり・トマト・インゲン・豆・ハーブなどを育てています。ルバーブや山ブドウでジャムを作るのは奥様の担当。きつね・りす・昆虫たちが訪れる暮らしは、自然のリズムに合わせた生活です。必要なものは、買ってくるのではなく自分で作ること、そしてそれを楽しむことが基本と話す飛塚さん。8月には北海道アウトドアガイドの資格を取り、これからは自然と生きる暮らしの楽しさを多くの人と分かち合いたいと考えています。