函館の防災マニュアル

2005-03-15 vol.320

函館市の防災の取り組み2005 地震対策と避難場所の確認方法

昨年の新潟県中越地震やスマトラ沖地震の報道が流れる中、道内でもあらためて“防災”への意識が高まっている。いうまでもなく我が国は世界でも有数の地震国であり、これまで各地で地震及びそれに伴う津波の被害を受けてきたが、そういった自然災害から生命や財産を守るためには、緊急時の情報伝達の速さと正確性、そしてそうした情報を受けて関係機関と住民がどのような対応をするかが極めて重要。

函館市の防災の取り組み2005 地震対策と避難場所の確認方法

【特別企画】はこだて防災マニュアル

気象庁は今年、地震を初期の小さな揺れの段階で把握し、大きな揺れが来る前に情報を発する「緊急地震速報システム」について交通・医療・報道・電力などライフラインに関わる各機関と具体的な活用方策を検討している。
今回は『函館海洋気象台』に取材協力と資料提供していただき、この緊急システムの概要をはじめ、道南圏における地震の各データなどをもとに、道南圏の防災について探ってみた。

有効活用で被害を減らす緊急地震速報システム

緊急地震速報システムの概要説明イラスト

震源から時間経過とともに広がる地震は、P波と呼ばれる初期の小さな揺れと、S波と呼ばれる大きな揺れがあるが、気象庁の緊急地震速報システムは、P波が発生した位置やその広がり、S波の大きさなどを解析する新型の「ナウキャスト地震計」を用いて、大きな揺れの数秒前に地震情報を関係機関に発するというもの。ライフラインに関わる各機関との連携によっては、このわずかな時間差によって被害を減らすことにつながることから、気象庁は今後、各機関とこのシステムの活用方策の検証のための試験運用に取り組んでゆくとのこと。

地震は予測可能なのか?

十勝沖地震後の函館市内の様子

【写真】十勝沖地震後の函館市内の様子

大きな地震に先がけて起こる小さな地震群を前震、大地震を本震、本震に引き続いて多発する小地震を余震と呼ぶ。前震は本震の震源付近に数日前〜直前に発生することが多いが、その数は多数の場合も少数の場合もあるが、前震を伴う地震は極めて少ない。つまり大地震の多くは突然起こるものであり、たとえ前震があったとしても、小さな地震はいつもどこかで発生しているため、その地震が前震であるか否かの判定は難しく、つまり大地震の予測は極めて困難なのだという。一方、大きな地震の後には引き続いて多数の余震が続発する。大地震ほど余震の発生する領域は広くなり、その広がりや形は概ね本震の震源域と一致する。気象庁では概ね震度5弱以上の震度を観測する地震が発生し、その地震活動が本震ー余震型であると見極めがついた時点で余震の発生確率を発表する。函館海洋気象台業務課の加藤正彦調査係長によると、「大地震の後の余震の発生確率の発表は10%などの数字の場合が多く、例えば降水確率の予報などに慣れている人が見ると非常に低い確率だと勘違いするケースも少なくない。ところが地震の発生確率は普段は0・01%程度であると考えると、それは非常に高い確率であるということを示しています」とのこと。
地震の発生については、決して確かな予測ができるものではないので、日頃から十分な防災意識を高めておく必要がある。また、大地震の後に流れる余震の発生確率にも、確かな知識をもって対応する必要があるのではないだろうか。

道南における地震データ

函館海洋気象台の計測震度計

【写真】函館海洋気象台の計測震度計

気象庁のデータが残っている1926年以降では、1960年の「チリ地震」、1968年の「十勝沖地震」、1993年の「南西沖地震」が、道南で起きた大地震として知られている。
函館海洋気象台によると、道南地域の断層帯として、函館平野とその西側の上磯山地との境界付近に位置する活断層帯「函館平野西縁断層帯」があるが、長さ24キロメートルのこの断層帯の最新の活動は、1万4千年前以後にあったと考えられるそう。地震発生の長期確率には幅があるが、その最大値をとると、今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では、やや高いグループに属することになるという。

函館市の取り組みと避難場所

函館西小学校にある避難所指定看板

災害が発生すると家屋が倒壊するなど、函館市内は大変危険な状況になることが想定されます。函館市では避難場所として、小中学校などの公共施設を中心に、旧函館地区で屋内141箇所、旧4町村地域で83箇所の建物を指定しているほか、避難地として公園など48箇所を指定しています。お住まいの地域の指定避難場所については市総務部総務課防災係Tel:21-3648までお問い合わせ下さい(函館市のホームページにも掲載されています)。

フレトピアセンター入船にある避難所制定看板

また、5年前から市が所有する建物の耐震診断を順次行っており、さらに今後は停電に備えるため、移動式発電機の購入を進めてゆく予定です。災害時の避難などの緊急情報は、マスコミとの連携によりテレビやラジオで放送したり、広報車が巡回して伝えるほか、旧4町村地域では防災無線放送も行います。また、道庁では、避難や気象状況などの情報をメールで送信するサービスを行っているので、市では登録を呼びかけています。備蓄食糧は避難者を3万3千人との予想に基づき、1日分9万9千食を目標に、毎年一定量を購入しています。道路が寸断され、防災機関の活動が困難な場合も予想されるので、町会単位で活動できる自主防災組織の設立を勧めています。新しく設立された組織には、防災資機材を貸与しています。

市立函館病院の防災システム

市立函館病院

市立函館病院では移転に伴い、病棟に免震構造を取り入れました。免震とは地震の揺れを吸収し緩和する技術で、市立函館病院では地下2階基礎部分の柱は、鉄板とゴムを交互に何層にも重ねた免震構造になっています。

市立函館病院の基礎にある鉄板とゴムを使った免震機構

この構造は、震度7クラスの激しい揺れも、ゆったりした揺れに変えるというもの。建物は耐震になっているので、崩壊することはありません。また、電気はガスエンジンによる自家発電装置を設備し、緊急時でも普段の半分以上をまかなうことができます。病院では欠かせない水は飲用可能な井戸水を備えています。ガスを供給するガス管は一般よりも防災に強い中圧ガスを使用。

市立函館病院の外来待合室

緊急用のスペースとしては外来待合室や院内講堂が使用できるよう造られ、エントランスホールも緊急事態に対応できるよう広く設計されています。屋上にはヘリポートがあり、救急患者搬入、または安全な場所へ移送が速やかにできるようになっています。また、病院では年2回の避難訓練を行い、緊急時に備えています。

備えておきたい防災グッズ

防災グッズ

防災セットは普段は必要がないので、つい備えを忘れがちになりますが、地震や台風が頻発する昨今を考えるとぜひ備えておきたいものです。上磯町七重浜7丁目の『サンワドー上磯店』(Tel:48-6000)では、非常袋とそれに入れて常備しておく防災セットを販売しています。

<防災21点セット8000円>

  • 持ち出し袋
  • 懐中電灯
  • すべり止め付き軍手
  • ロープ5m
  • ハサミ
  • ピンセット
  • 毛抜き
  • 救急絆創膏
  • ガーゼ
  • 三角巾
  • 脱脂綿
  • 包帯2個
  • 飲料水運搬パッグ
  • 保存用飲料水
  • レジャーシート
  • 缶切
  • ティッシュペーパー
  • 缶入り乾パン110g×2個
  • ロウソク
  • マチ付きタオル

飲料水は3年、食料は4年保存できるので、いつも中身をかえる必要はありません。重さは2キロ程度で、背負って歩いても負担は少ないものです。そのほか、よく売れているのは、

  • <花瓶などの小物の下に敷いて転倒防止をするシート 980円>
  • <家具転倒防止ポールミニ1280円、L1480円>
  • <ガラス飛散防止食器棚用 780円>
  • <ガラス戸用 1280円>

灯油も入れられる携帯ガソリン容器もいざという時に便利なグッズ

<非常用ロウソク 598円>は33時間もちます。懐中電灯は電池の耐用時間が切れている場合があるので、ロウソクが使いやすいようです。

FMいるかの災害緊急放送

FMいるか

停電が想定される災害時では、テレビから情報を得る事は難しくなるでしょう。そこで役立つのが携帯ラジオです。昨年9月の台風時には時間を延長して、刻々と変わる台風の進路や警報、避難場所の案内、また市民から寄せられた情報を流した『FMいるか』の放送が大変に役立ちました。『FMいるか』の災害発生時の放送としては、

  1. 大きな地震が発生した場合は、津波や火災などへの注意点検を呼びかける。
  2. 台風などでは事前に気象警報が発令されるので、随時注意を促す。通常、午後10時までの時間を延長し、放送は警報解除まで行う。
  3. 停電など事故発生の場合、停電地域や復旧状況を随時放送する。
  4. 行政からの緊急情報や、一般店鋪からの生活情報を細かく伝える。

としています。昨年の台風災害で予想以上に好評だったのは、不安解消のために流した音楽だったそうで、被災者の精神的ケアにも努めるそうです。また、通常放送でも災害への備えを呼びかける「防災ひと口メモ」も放送しています。

【専門家に聞く】もしもの時の地震保険

ファイナンシャルプランナー濱野州喜司さん

地震保険とは地震・噴火・津波を直接または間接の原因とする火災・埋没・流失による損害を補償するもので、単独で加入できるものではなく、居住用の建物及び家財を対象とした火災保険の契約時に原則としてセットで加入できるものです。
昭和39年の新潟地震を機に創設への要望が高まり、同41年に「地震に関する法律」が制定され、それに基づいて政府と民間の損害保険会社が共同運営しています。地震保険は誕生からまだ日が浅く、今日に至るまで補償範囲の拡大や補償内容の改善などが行われてきました。地震は巨大損害や発生予測の困難性などから、通常の損害保険にはなじまない性質があるため、政府と民間の共同運営が必要となります。つまり、公共性が強い保険ということですね。火災保険では、地震による火災は補償されません。また、昨年の新潟中越地震の時は、半損以上の住居に国から補助金が出ましたが、金額的には解体費用程度にしかならず、ローン継続中の人が再び家を建て直すことはオーバーローンとなってしまいます。そういう意味から、ファイナンシャルプランナーの立場として、地震保険の必要性を強調します。
地震保険は公共性が強いという性質上、補償内容が今ひとつ満足できない…という声もあります。しかし、少し専門的な話になりますが、最近は海外の再保険マーケットに進出してリスクを分散することで、より充実した補償内容の地震保険を実現した保険会社も出てきたり、一般住宅だけでなく、企業向けの地震保険も登場するなど、その動向には我々も注目しています。火災保険加入時には必ず、損害保険会社または代理店から地震保険の説明を受けるようにして下さい。火災保険契約時に地震保険の契約をしなかった場合でも、火災保険の契約期間の途中から地震保険を契約することができます。
最後に、契約についての注意ですが、火災保険契約申込書には「地震保険ご確認欄」があって、それに捺印すると、地震保険に加入しないという意思確認になります。加入する場合には、その欄に“印鑑を押さない”という加入方法ですので、これから契約する予定がある人は注意して下さい。

【はこだて防災マニュアル】取材協力・資料提供

防災情報の入手は
気象庁のホームページまで…
気象庁では防災情報や様々なデータをホームページに掲載し、一般向けに提供している。
http://www.jma.go.jp

函館海洋気象台
●函館市美原3丁目4-4
Tel:46-2211