青いぽすと

函館のロングセラー商品

2004-01-30 vol.293

函館のお土産にもオススメな長年愛されてるロングセラー6品

今や全国区の人気を誇る函館発のロングセラーのひとつ、コアップ・ガラナの製造発売元『株式会社小原』は平成11年に、発売当初に使われていた懐かしい瓶入りの復刻版「アンチックボトル」を発売し、注目を集めました。函館っ子ならおそらくほとんどの人が知っているコアップ・ガラナの昔のボトルの独特のデザイン。その発想は、女性のウエストラインをモチーフに作られたという、あのコカ・コーラの有名なボトルデザインに対抗して、日本女性の象徴的存在のひとつである舞妓さんの姿をモチーフにデザインしたというものでした。

日本ほど美味しい水に恵まれないアメリカという風土で大ヒットし、世界中の誰もが知っている世界一の清涼飲料水になったコカ・コーラ…。しかし、相手がたとえ世界一のコカ・コーラであったとしても、同じ清涼飲料水メーカーとしては負けたくないというあくなき情熱とチャレンジ精神が、今でも函館市民に根強い人気の、シャンパンのような味と香りを持つ“おらが街”の清涼飲料水を産み出したのです。

地域で生まれ、地域の人達に昔から愛され続けるロングセラー。そこには地域サイズという枠には決して留まらない、作り手達の限りなき夢と情熱の物語が幾つも存在します。そしてそれらはいつの時代も地域の活力の原点であり、最近よくいわれている“地域活性化”のための大きなヒントでもあります。
今回は函館っ子に長年親しまれている、この街のロングセラーの一端に着目してみました。それらは1個のコロッケだったり、ケーキだったりととても素朴な物ばかりですが、それぞれ誕生までには素敵なエピソードがあり、その誕生秘話の中にこそ、商品力だけではない、内に秘めた魅力が隠されているような気がします。
函館で生まれ育った生え抜き商品の存在を知り、地元・函館の人達が買うこと、使うこと、そして伝えてゆくこと。すなわち「地産地消」とか「身土不二」といったものの考え方こそ、私達函館市民がこの街で豊かに暮らし、そして豊かな街を育んでゆくことにつながってゆくのではないでしょうか…。
今回紹介した物のほかにも、函館発の優れた商品、技術は数多くあります。それらに注目して、良い物があれば積極的に買い、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

コロッケ

阿さ利本店

コロッケ 1個 50円

市内宝来町にある精肉店の老舗『 阿さ利本店』の創業は明治34年。市民に長年愛され続けるコロッケは、戦時中の物資が不足していた時代に作られはじめた。この店は創業当初より、豚を1頭仕入れて職人さんの手にとって解体して販売しているが、コロッケには、精肉としては売られない豚肉の美味しい部分を挽肉にして、ジャガイモ、玉葱とブレンド。それを自家製のラードを用いて高温でカラッと揚げるこの店ならではの逸品。食べる物が少なかった時代、多くの市民の舌を満足させようと作り上げられたコロッケは、今も1個50円と昔ながらの値段が嬉しい人気のロングセラー。毎朝5時30分から仕込みがはじまり、午前9時15分頃に店頭に並ぶが、いつも午前中で完売とか。お求めは電話での事前予約をオススメしたい。

営業時間/午前9時〜午後6時
定休日/毎週水曜日

●宝来町10-11
Tel:23-0422

べこ餅

市中屋

べこ餅 1個110円

和菓子店『市中屋』は、創業が4代前までさかのぼるという老舗中の老舗。現在の市内谷地頭町に店を構えたのは昭和9年の大火後で、それ以前は青柳町にあったそうです。
創業当時は雑貨販売の傍ら和菓子を売っていましたが、次第に人気が出て本格的な和菓子店になりました。1番人気は「べこ餅」(110円)。色が黒糖1色で、よくみかける白と茶の2色のものとは違い、その作り方は祖父の代から変わっていないのが魅力。1つひとつ手作りで、しっかりした歯応えのある、この店ならではの味には根強いファンが多く、わざわざ市外から買いに来るお客さんもいるのだとか…。先代から継承した製法について「これからも決して変わることはありません」と4代目の市中貴浩さんは話しています。

営業時間/午前7時30分〜午後7時30分
定休日/毎週日曜日

●谷地頭町26-11
Tel:23-3027

コアップ・ガラナ

株式会社小原

市内亀田港町に本社を持つ『株式会社小原』は昭和6年創業。同25年より法人化となり、ロングセラー「コアップ・ガラナ」は同35年から製造販売がスタートした。ブラジル産のガラナの実から抽出したエキスを主原料にした同製品は『日本コアップ株式会社』が認定した製品だが、当初は、当時爆発的人気を誇ったコカ・コーラとの市場競争の中で味や香りの面で試行錯誤が繰り返され、現在のヒットにつながったシャンパンのような味わいは、道内の漁村で漁師さんがウイスキーをガラナで割って飲んでいるのをヒントに作り出されたという。3世代に渡って愛され続ける小原のコアップ・ガラナの人気は今や全国区。現在はペットボトルタイプが主流だが、平成11年に発売された瓶入りの復刻版は記録的売り上げを達成した。

コアップ・ガラナ復刻版
アンチックボトル
230㎖入 120円(税込)
スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどで取り扱い

本社

●亀田港町39-40
Tel:45-8990

工場

●七飯町字中島29-2
Tel:65-6545

ソーセージ

レイモンハウス元町

市内元町に店舗を構える『株式会社カール・レイモン』は、「レイモンさんのソーセージ」で全国的に有名。“胃袋の宣教師”といわれたレイモンさんは大正末期に函館市内に定住し、本物の味にこだわったハム、ソーセージを作り続けた。手作りのため販売数量は限定で、店にはいつも行列ができたという。レイモンさんが作り続けたハム、ソーセージは現在、工場生産となったが、弟子だった福田俊生氏が直伝の製法を継承し、昔ながらの伝統の味を変わらず守り続けている。最少限度の添加物しか使わず、保存料や着色料は使っていない。ウインナーは、豚牛合い挽きのあっさりした口あたりで、フランクフルトは豚の粗挽きを使用し、コクがあってパリッとした食感が人気。ウインナー、フランクフルトともに580円。

営業時間/午前9時〜午後9時
定休日/年中無休(年末年始を除く)

●元町30-3
Tel:22-4596

クワードケーキ

五島軒

クワードケーキ 1500円
(クルミのパイ)

五島軒の「クワードケーキ」(1500円)は誕生から50年経つ、香ばしさが人気のクルミのパイ。当初は結婚式の引き菓子でしたが、その味が評判となり、一般向けに発売されることになりました。バター風味のパウンド生地をパイ皮で包んで焼き上げたもので、小麦、砂糖、バター、ミルクがすべて同量に配合されています。この製法は焼き菓子の最も基本となるもので、当初は材料をすり鉢ですって混ぜ合わせていましたが、現在はミキサーによる作業に変わりました。しかし、季節や材料の状態で多少分量や作り方が変わることはあっても、製法の基本は50年前と変わらず。シンプルな味が、これまで長い間愛されてきた理由のようです。現在、その人気は市内だけにとどまらず、五島軒の知名度と同様、全国区になっています。

末広町本店 十字街プロミエルカモイ店
棒二森屋 丸井今井 イトーヨーカドー函館店
ハイパーマートダイエー上磯店ほか
市内直営店にて取り扱い

●本店/末広町4-5
Tel:23-1106

いなりずし

弁慶力餅三晃堂

いなりずし 6個入360円

“大門地区にこの店あり”と言われる『弁慶力餅三晃堂』の創業は明治40年。初代店主が函館大火の直後、一面の葦原だった市内松風町の現在地で干菓子の製造販売に着手したのが、そのはじまり。戦後、大福餅など餅菓子を主体とした和菓子製造販売に転じ、いなりずしの発売は昭和32年からスタートした。以来、餅菓子といなりずしは大門名物と呼ばれ、多くの市民に愛されてきた。長年の人気の理由について「厳選された良い米を使用していることと、その日の朝にできたすしあげを添加物を使わずに味つけしていること。さらに冷凍保存はせず、手作りしたものをその日のうちに店頭に出すこと…」と4代目店主の野路邦英さんは言う。いなりずしは6個入が360円、10個入は600円。

営業時間/午前8時〜午後7時
定休日/年中無休(正月期間を除く)

●松風町4-11
Tel:23-1709

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