函館の消火栓は地元生まれのアメリカンスタイル
函館の消火栓が実は凄いと教えてくださったのは、函館工業高等専門学校准教授で、知られざる函館の魅力に詳しい奥平理さん(=写真)。古くから大火に襲われてきた函館では、明治時代から設置してきた地下式消火栓に加え、昭和12年に地上式消火栓の設置を始めた。当時、消火栓の設置は国内では先駆けだったため参考になるものが国内になく、市の担当者をアメリカに派遣。さらにカタログや実物を取り寄せてアメリカで使用されていたものをモデルに市が設計した。現在、全国的にはメーカー製の消火栓が使われるのが通常な中、旧函館市内では地元企業の株式会社村瀬鉄工所が製作した「函館型」が使われている。特徴は、通常1箇所の放水口が3箇所あることと、ボディが黄色であること。奥平さんは、「アメリカンスタイルの消火栓は、異国情緒あふれる函館の街並みを演出しています」と話している。平成26年度末現在、この消火栓は2011基設置されている。
(取材協力/奥平理氏、函館市企業局)
函館にアメリカ大リーグが来たことがある
昭和9年に米大リーグ選抜が来日しての日米野球が開催されることになった際、全日本の主将で函館太洋倶楽部の久慈次郎のもとに全日本総監督の市岡忠男より函館での試合開催の打診があった。同年3月に大火があった函館では「野球どころではない」という意見も多かったが、そんな時だからこそ市民に勇気を与えたいという久慈氏の強い思いが叶って、全国各地で開催された全16戦のうちの1戦が11月8日に現在の湯川中学校の場所にあった湯の川球場で開催、米大リーグ選抜が日本選抜に5対2で勝利した。この年の日米野球で米大リーグ選抜は伝説のプレイヤーとして有名なベーブ・ルースやゲーリッグが参加。日本選抜の主将を務めた函館の球聖・久慈次郎は捕手として沢村栄治やスタルヒンといった日本野球史に名を残す名投手をリードした。
(参考文献・引用/函館太洋倶楽部ウェブサイト)
箱館奉行所は古い写真から復元した
江戸末期、五稜郭に奉行所が存在していたのは、わずか7年間という短いもので資料や手がかりが乏しく、昭和58年頃から始まった復元を目指した取り組みは困難を極めました。そんな状況の中、平成22年に箱館奉行所は復元されます。そこで大きな役割を果たしたのが、図書館などに所蔵されていた古写真でした。
この写真から屋根の瓦の枚数を数えることに成功。それに五稜郭から出土した当時の瓦の大きさから、奉行所の正確な大きさを算出できたわけです。また、ほぼ斜め45度から撮影されているのも、透視図法という手法を応用した写真解析から、精密な設計を行う上での重要な要素となりました。多くの人の努力や工夫によって箱館奉行所は復元されたのです。
(取材協力/箱館奉行所 五稜郭町44-3、Tel:51-2864)
「100万ドルの夜景」はラッキーピエロの登録商標
美しさが国内外に広く知られる函館の夜景は「100万ドルの夜景」と呼ばれていますが、この「100万ドルの夜景」という言葉が登録商標であることはご存知でしょうか? 商標の権利者はラッキーピエロを運営する『有限会社未来グループ』(指定商品・指定役務=宿泊施設の提供、飲食物の提供)。同社の王未来副社長によると、平成9年に福島県のホテルから譲渡され権利を取得。登録商標は本来、取り扱う商品やサービスを他社と差別化するために取得するもので、登録された商標は権利者が独占的に使用できます。しかし同社では、使用にライセンス契約を求めていません。理由は「自由に使っていただくことが函館のPRになるから」。王副社長(=写真)いわく、「100万ドルの夜景と付けたいろいろな商品やサービスがあっていいと思っています。見た人がこのフレーズを記憶にとどめ、いつか行ってみたいと思ってもらうための情報発信。そんな和がどんど広げればいいと思います」。
函館にヘレン・ケラーが2回来ている
ヘレン・ケラーが函館を訪れたのは1937年(昭和12年)と1948年(同23年)。いずれも日本国内を講演して回った際、来函しました。1度目の1937年は6月18日から22日まで滞在し、19日に新川小学校で大講演会を行い、21日には現在の北海道函館盲学校と北海道函館聾学校の前身・函館盲啞院を訪問。函館盲啞院ではこのとき、神社・仏閣の木造模型を用意し、触れてもらうことで日本文化を紹介しました。また、この年の来函に関しては、遺愛女子中学・高等学校の昭和12年発行の同窓会報に、「6月18日ヘレン・ケラー女史を本交正門前に出向かう」との記述もあります。1948年は9月12日に来函。遺愛75周年史(昭和35年発行)によると9月15日に公開講演が行われています。ヘレン・ケラーが触れた神社の模型は現在、北海道函館盲学校に展示されており、事前連絡のうえ訪問すれば見学可能です。
北海道函館盲学校はTel:42-3220。
(取材協力/北海道函館盲学校、遺愛女子中学・高等学校)
函館のイカが美味しいのは回遊ルートの条件がいいから
透き通りコリコリとした食感が魅力の新鮮な真イカの刺身は、函館を代表する海の幸。地元で真イカと呼ばれるスルメイカは函館市の魚にも制定されています。日本各地で獲れるスルメイカですが、「函館のイカが美味しい」といわれる理由を函館水産試験場、調査研究部の澤村さんに尋ねてみました。美味しいイカの条件は多くありますが、最も重要なのは鮮度。函館は目の前が漁場であるため、非常に鮮度の高い状態で食べられる恵まれた環境です。さらに、プランクトンなどが豊富な北の海で成長し、南の海で産卵するスルメイカの回遊ルートも好条件。6月から翌年1月までの長い漁期で、体に十分な栄養を蓄えた状態のスルメイカが獲れるのは、日本海と太平洋の両海洋が交わる津軽海峡ならではなのだそう。明治初期からイカ漁が行われているとされる函館では、朝食にイカ刺を食べる習慣もあり、「イガ、イガ~」と早朝のイカを販売するトラックの声も夏の風物詩となっています。
新幹線カラーの市電は期間限定のレア電車
大正2年の運行開始から現在まで、市民や観光客の頼れる足として活躍している市電は、函館を語る上ではずせない存在。そこで、市電にちょっと詳しくなる話を『函館市企業局交通部』に伺いました。新幹線といえば、現在新幹線カラーの電車が1両運行していますが、実はこのカラーは期間限定。電車の歴史の1つに刻まれるといっても過言ではないレアな電車なのです。
製作時の状態を今も保っている電車としてレアなのが、昭和25年に製造された530号。撮影に使用されることも多く大切に扱われているため、通常はあまり運行していませんが、重さがあり力も強い作りなので冬道に強く、冬期は現役車両として運行中。車内からは、当時片面に3枚あったドアのなごりを見ることができます。また、つり革の位置は当時の日本人の平均身長に合わせて低い位置に設置されており、子供にも優しい車両といえます。ちなみに、旧型の非広告車両は530号と719号の2両のみと、こちらもレアです。
ハセストアのやきとり弁当は、弁当が売り切れたから誕生した
函館市民のみならず観光客からの人気も高い『ハセガワストア』の「やきとり弁当」が誕生したのは1978年。「弁当が売り切れた後で来店したお客様からの“弁当ないの?”という要望を受けて、創業者の長谷川会長が単品で販売していたやきとり、おにぎりに使う海苔、ご飯を組み合わせてパックに入れて提供したのがきっかけ」と教えてくれたのは、ハセガワストア中道店店長の黒嶋さん。
その後、改良を重ねて「やきとり弁当」となった現在も、注文を受けてからやきとりを焼くというスタイルは変わりません。たれ、塩、塩だれ、うま辛だれの4種類の味、バリエーションも10種類ほどと豊富にそろっており、ハセガワストア全店で販売しています。
行楽の時や、遠方から親戚が集まった時など、「当時の柔軟な対応がなければ、やきとり弁当は誕生していなかったのかも…」という話を添えて、楽しみながら味わってみませんか?
函館どつくの進水は昔ながらの滑走式進水方式
函館どつくは進水作業に滑走(ボール)式進水方式を採用している造船会社。この進水方式は、鉄球を使い、地上で建造した船を船台から水上へ滑り出させる昔ながらの方法で、ドックに注水して船を浮き上がらせる方式が主流となっている昨今、全国的にも珍しいものとなってきています。一般公開される同社の進水式では、大きな船がごう音とともに水面に向かって滑り出してゆく、迫力あるさまを見学できます。進水式では支綱と呼ばれるロープが船につながれており、これを切断するとシャンパンやくす玉が割れ、船が動き出します。この支綱切断に使われたロープは安産のお守りになると言われており、妊婦さんの腹帯などに使われることがあるそうです。函館どつく株式会社では次回、4月7日に進水式を予定しています。
開催時間など詳しくはホームページ(「函館どつく」で検索)をご確認ください。
(取材協力/函館どつく株式会社 函館造船所 造船部)
木古内町に、撮り鉄にオススメの新幹線展望台がある
北海道新幹線では、高速走行の新幹線区間で「三線軌条」が採用されます。三線軌条とは、違う規格のレール幅の車両を同じ路線で走らせるための仕組み。北海道新幹線では青函トンネルから木古内駅近くまでの区間で、共用レール、貨物用レール(狭い軌間)、新幹線用レール(広い軌間)という三本のレールが敷かれています。
これは現行の新幹線区間では唯一の方式で、木古内町にある新幹線展望台から、この三線軌条をバッチリ観ることができます。
展望台は屋根付きなので、天候を気にすることなく撮影に没頭できます。開通後は新幹線の通過時刻が記載された掲示板も備えられるとのこと。トンネルの上から見下ろす新幹線の姿も見ものですよ。