港街はこだて…7月1日は開港記念日
この当時、例えばロシアは軍艦の寄港地として、アメリカは捕鯨船の寄港地として、日本へ開港を望むなど、諸外国がアジアの港に手を広げはじめた時期であった。そして嘉永7年(1854年)、アメリカ東インド艦隊司令長官ペリー提督がついに日米和親条約を締結。箱館は下田とともに開港した。
「婦女子は隠し、葬式は夜間男だけでせよ」とは、日米和親条約を締結後、ペリー艦隊が箱館に来ると聞いて街に出された御触書である。初めての外国人の来訪に人々は混乱した。しかし実際には、日本の生活に無邪気に関心を持つ水兵たちの姿を見て、人々は次第に艦隊の面々に親しみを持つようになったという。
安政6年(1859年)6月2日、日米修好通商条約締結。太陽暦にすると7月1日にあたるこの日は、国際貿易港・函館の開港記念日になった(昭和10年に函館市が制定)。
箱館戦争、北洋漁業、造船業…函館の歴史は恵まれた港の繁栄とともに駆け抜けていった。
そして開港から百余年を経過した現在…。かつての繁栄の痕跡を色濃く残した港界わいの倉庫、商店、銀行、郵便局などは当時の役目を終え、ウオーターフロントという巨大なプロシェクトで人々のためのアミューズメントゾーンに姿を変えた。かつて、たくさんの人が生活し、遊び、夢を見、莫大な財を築き、夢破れて全てを失い、泣き笑いした港界わいに今、私たちは新しい夢を託し、その空間に創造を広げている。過去…現在…そして未来…。この街は私たちの夢をつなぐ。
ロマンチック函館。かつて港に立ち寄った船員が家族に手紙を出したかも知れない郵便局は若者たちの酒落たデートスポットになり、かつてこの街で暮らした外国人が祈りを捧げた教会では函館のカップルの結婚式も行われている。かつて素晴らしい港と世界に称賛された扇形の地形は夜になると美しい光を放ち、海に浮かぶ百万ドルの銀河を演出する。かつて…かつて…かつて…。いにしえこそ、函館ロマンの演出家である。
今、この街で生活する私たちの夢こそ、21世紀へと語り継がれてゆく函館ロマンの素晴らしき演出家なのかも知れない。
開拓者の夢とロマンを感じて…西部地区・港界わいの散策
異国文化の玄関口として賑わった港町・函館。いにしえの夢とロマンを感じながら、西部地区の港界わいを散策してみよう。
函館の西端に位置する「函館どつく」は、明治29年設立の函館船梁(株)がその前身。昭和26年に社名を函館ドツク(株)と改称し、同30年には戦後初の輸出船を受注し翌年進水を実現するなど、長年にわたり函館のシンボル的企業として市民に愛されてきた。
昭和40年代後半のオイルショック以降、造船不況の中経営危機を迎えるが、同59年「函館どつく(株)」として再出発し、再建に向け意欲を燃やしている。当「青いぽすと」も、この中の事業開発部のプロジェクトから産声を上げた。
函館どつくの上、函館山西側の小高い丘には外国人墓地があり函館港を見下ろしている。ペリー提督が来航した際、亡くなった水兵を埋葬したのがそのはじまりである。電車通りから1本海側のルートを歩いてみよう。
大町にある「太刀川米穀店」という木造の建物は、米穀店と漁業、回漕業で財をなした初代太刀川善吉が明治34年に建てた住宅と店舗。明治の商家建築として昭和46年、国の重要文化財に指定された。
ルートをさらに末広町方向へ進もう。左手には相馬倉庫群が見えはじめ、その倉庫の間に建っているのが「新島嚢海外渡航の地碑」。“男児志を決して千里を馳す”。同志社大学創始者・新島嚢は当時の国禁を犯し、アメリカへ渡るため元治元年(1864年)、箱館にやって来た…。
ルートを少し山側に向けよう。末広町電停から基坂を上がり、正面に見える元町公園の手前左側にあるモダンな建物が、「旧イギリス領事館」だ。昭和9年まで領事館の役目を果たしたこの建物は現在、開港当時の様子がよく分かる開港記念ホールと、英国風のティータイムが楽しめるティ・レストラン「ヴィクトリアンローズ」のある開港記念館に生まれ変わった。
ルートを再び海側へ…。末広町から海沿いにJR函館駅側へ進むと、街の雰囲気は次第に華やかになり、美しく港に映える森屋の屋号の倉庫群の姿を目にする。港町・函館を代表するウォーターフロント地区である。
商港のシンボル・金森倉庫群は飲食、ショッピング、多目的ホールなど様々な顔を持つアミューズメントゾーンに姿を変え、市民や観光客に親しまれている。特に、飲食スペースのひとつ「函館ビヤホール」は、明治31年誕生の函館のビヤホールの面影を今に伝えている。金森倉庫群横にある飲食、イベントゾーン「BAYはこだて」は旧日本郵船倉庫。
この食庫の堀割り(水路)に架かる橋こそ、ウォーターフロントという言葉がよく似合うロマンたっぷりの七財橋だ。
今や、全国有数の観光ゾーンとなった函館の西部地区港町界わい。そこにはかつてこの街に生きた人々の夢とロマンの面影が留められている。ガラスライトの光、波の音、今宵は橋のたもとで。
散策の合間にちょっとひと息港界わいのお酒落なお店
和風レストラン古稀庵(こきあん)
入口のたたずまいからして何か期待させるお店明治末期の海産問屋を生かした和洋折裏の建物で、内部は・檜・けやき・桂などの材がふんだんに使われている。素材は天然物への徹底したこだわりをもち、化学調味料も一切使わない。季節の山菜も豊富。栄養バランスのとれたヘルシーな料理が女性に喜ばれている。
営業時間
11:30~14:30、17:00~21:00
無休
日替りランチ950円〜
セットメニュー1500円〜
●函館市末広町13-2
Tel:26-5753
ピースフル・プレイス
古い船具店を改造した木造の喫茶店。前の通りは1日中車の往来が少なくほっと一息つくには最適。広々とした店内は個人での利用はもちろん、2階の屋根裏の様な部屋を利用してグループで時間過すことも可能。料理は全て手作りで、店の人が醸し出すゆったりとした空気が店全体をやわらかく包んでいる。
営業時間
17:30~24:30
無休
ヨーグルトジュース500円
チョコレートパフェ550円
●函館市大町9-15
Tel:27-0076
カリフォルニアベイビー
大正4年に建てられた木造の旧特定郵便局を再利用したあまりにも有名な喫茶店。ライス系のボリュームの多さと、深夜まで営業している利点から若者に根強い人気を誇る。ドリンク類の種類も充実。この春、新メニュー「バーベキューポークリブ・750円」誕生。
営業時間
11:00~翌1:00
無休
シスコライス650円
ベーコンエッグライス700円
●函館市末広町23-15
Tel:22-0643
函館ビヤホール
金森倉庫を利用したレンガ造りの建物。赤レンガと檜の柱が醸し出す深々とした奥行きある空間は、荘厳な雰囲気を漂わせている。夕刻には仕事帰りのサラリーマンや旅行客などで活気にあふれ、その中に身を置くと洗練された都会の空気が味わえる。
営業時間
平日 11:30~22:30
土日 11:00~22:30
無休
赤レンガビール(オリジナル地ビール)中730円、小500円
えぞシカのステーキ1000円
●函館市末広町14-12
Tel:27-1010