オススメの本
2014-09-30 vol.549
読書してますか?函館で活躍中の人に聞いてみたオススメ良書10
読書の秋です…。例えば、人生のターニングポイントになったような〝自分にとって特別な1冊〟がある人も多いのではないでしょうか?今回は道南で活躍している10人の方々にズバリ〝私が出会ったこの1冊〟を紹介していただきました。秋の夜長はご自宅でゆっくりと読書をする時間を作って、人生を楽しく生きてゆくためのヒントになるような、そんな素敵な1冊を探してみませんか?
幕末の志士達に影響を与えた1冊
言志四録〔現代語抄訳〕 PHP研究所発行 佐藤一斎著 岬龍一郎翻訳
20代の頃は東洋の哲学に興味を持ち、荘子など中国の思想家の本をよく読んでいました。その後、30代の頃に出会った『言志四録(げんししろく)』という本が私の生き方の指針となった1冊です。佐藤一斎という江戸時代の儒学者が書いたこの本は、西郷隆盛など幕末の志士達に大きな影響を与えた1冊で、私が読んだのは岬龍一郎翻訳の現代語抄訳で、とても分かりやすく翻訳されています。「天はなぜ自分をこの世に生み出し、何をさせようとしているのか?」について書かれたところは印象的で、仕事とは何か、人の道とは何かについて考えさせられます。経営者に必要なのはマーケティングの勉強と心の勉強です。その両輪がしっかりしていることが事業を成功させる秘訣です。私はマーケティングの本もたくさん読んでいますが、心の部分、つまり商人としての人間性を磨く1冊として、この本を何度も読み返しています。
『ラッキーピエログループ』代表 王 一郎 さん
全国的に有名な函館のご当地バーガー「ラッキーピエロ」の創始者。道南16店舗を展開する地域No.1戦略を成功させたその経営理念が、全国の経営者から注目される。
通勤途中の不忍池が舞台で愛着
雁 籾山書店発行 森林太郎(森鴎外)著
昭和30年、私は東京の上野団子坂上に住んでいた。近くの鴎外〈観潮楼〉跡地に、千朶書房を営んでいた鴎外の子息・類(るい)氏と親しかった。
『雁』には青絹の青版と赤絹の赤版の2種類の初版本(大正4年)があり、赤版が稀 (きこう)本なので入手に苦労した。私の通勤途中の不忍池が舞台の『雁』には愛着がある。医学生・岡田と高利貸の妾・お玉との、無縁坂と不忍池を舞台とした出会いを香気高い筆致で描かれ、お玉の運命が岡田の投石により不忍池の雁が死んだように、偶然が織り成すお玉の我の自覚の心理描写が悲しくも美しい。横山大観の双雁の口絵が象徴的である。映画「雁」は、芥川比呂志と高峰秀子が好演、モノクロが墨絵のような抒情を生んだ。
今は千朶書房跡地は図書館になっている。昭和30年には跡地から東京湾の白波が見えた。まさしく観潮楼であった。
『函館護国神社』宮司 真崎 不二彦 さん
「函館護国神社」宮司。大の読書家として知られ、ご自身の書斎には数多くの書籍が並ぶ。また、コラムニストとしても活躍しており、その美しい文体には定評がある。
物事を別な角度から見ることを教えてくれた1冊
『巨人の星』に必要なことはすべて人生から学んだ。あ。逆だ。 ㈱双葉社発行 堀井 憲一郎著
漫画やアニメなどでスポ根ものが流行っていた時代に育ち、私自身も野球をやっていましたので、「巨人の星」の影響を少なからず受けていました。根性とか、友情のあり方とか、こういう時に頑張らなければ男じゃないとか、「巨人の星」の精神論みたいな部分を崇拝していました。とはいえ、子供心にも疑問に思う点はあったんですが、それでもやはり星飛雄馬でした。そんな私がこの本に出会ったのは、サラリーマンをしながら「木下酒店」をオープンした頃です。「巨人の星」の数々の謎が解け、極上の笑いが生まれるこの1冊は、物事を別な方向から見てみることや発想を転換させることを教えてくれました。ガチガチの考え方も、別な角度から見ると実は楽しいことだったりします。「巨人の星」と照らし合わせて読むのもおすすめです。どちらも店にありますので、興味のある方はぜひ、お立ち寄りください。
『木下酒店』店主 木下 博喜 さん
1967年生まれの、自称ワインと愛の伝道師。1997年に木下酒店をオープンし、この5月に梁川町に移転。「木下さんと愛と哀しみの黒汁楽団」のヴォーカルでもある。
気持ちをリセットしたい時に読む本
夢をかなえるゾウ 飛鳥新社発行 水野敬也著
私は、「夢をかなえるゾウ」のテレビドラマを観て、面白いなと思ってこの本を購入しました。
夢ばかりを膨らませて何も頑張ろうとしない主人公のサラリーマンが夢を叶えるために、象の顔をしたインドの神様・ガネーシャからの課題を行いながら、今までの自分を変えていき、建築家になるという夢を叶えるお話。命令のような課題は「靴を磨きなさい」「コンビニで募金をしなさい」という誰にでもできるような簡単なことで、夢とは関係がないように思えることばかりなのですが、忙しさにかまけて簡単なこともできていなかった自分を見つめ直させてくれる本です。
私も師匠から、「立派な人になるためにはきちんと土台を作らなければいけない」と教わっていたおかげで今の自分があると感謝しているので、気持ちをリセットして落ち着きたい時によく読み返す大切な本です。
歌手、タレント 暁月 めぐみ さん
函館市出身。ユニバーサルミュージック所属。テレビやラジオなど各メディアでも活躍。2009年「ふるさとになりたい」をリリースし函館市観光大使に就任。
いい歳をしたヒーロー好きにおすすめです!
ウルトラマン対仮面ライダー 株式会社文藝春秋発行 池田憲章+高橋信之著
永遠の憧れであり、人生を共に生きた友であり、人として大切なことを教えてくれた師でもあり、一生心の中に存在する国民的2大ヒーローのウルトラマンと仮面ライダー。放送開始から48年経ったウルトラマンと43年経った仮面ライダーですが、その輝きは色褪せず、むしろ大人になるほど魅力が増してくるのは何故でしょう。そんな僕のような一生子供の方々に読んでいただきたいのが、ありそうで意外とない(あるかも?)この本。
ウルトラマンと仮面ライダーを対決させるスタイルで比較し分析。知らなかったことや知る人ぞ知るエピソードが、当時の関係者や在りし日の石ノ森先生、円谷皐氏の話しなどで分かり、さらにこの2大ヒーローにのめり込んでいきます。
著者の池田憲章さんと高橋信之さんは、現在59歳と58歳。いい歳をしたヒーロー好きは沢山いるんです。そう、永遠の子供達が…(と、キレイにまとめる)。
『玉光堂五稜郭店』店長 白井 和也 さん
1989年に玉光堂に入社。子供の頃から音楽好きで、本紙コーナー「音楽ドラゴンゲート」でも様々な音楽を紹介。CDを愛し、音楽配信反対派の46歳。
楽しくないと頑張れない
答 サンクチュアリ出版発行 軌保博光著
30歳を迎えた当時は、色々な仕事をしてみても本当にやりたいと思える仕事が見つかりませんでした。自分にできる仕事はないんじゃないか? とまで思っていたそんな時に出会ったのがこの1冊。今までの人生で1番ダメだった時期に、元気をもらったような本です。
「迷ったら迷わず楽しい道へ行け」。自己啓発的な一言を集めたこの本の中の言葉は、遊べる本屋ヴィレッジヴァンガードでやりたいと思う仕事に出会い、独立してお店を持った今でも自分を支え続けてくれています。
ただ楽しいだけなのがいいのか? というとそういうわけでもなく、〝楽しい事〟と〝楽な道を選ぶ事〟は同じではない。楽しいことをするためには努力したり、我慢したりすることが必要になる。頑張らなければ楽しい事はできない。そして、楽しくないと頑張れないということですね。
『ワンダフルワールド! 』店長 上村 佳樹 さん
本を読まない人のための本屋『ワンダフルワールド!』は、本や雑貨などがたくさん。クスッと笑えるPOPだけでも楽しめる。七重浜4-39-1、☎48-5201。
リフレッシュするために読む海外小説
マギの聖骨(上)(下) 竹書房発行 ジェームス・ロリンズ著 桑田健訳
著名な経営者が書いた本も良く読みますが、好きで読むのは海外小説の日本語版です。
その中でも「発売されたらすぐに買う」というのがジェームス・ロリンズの『シグマフォースシリーズ』ですね。最新作は『マギの聖骨』という作品なのですが、歴史的事実を、最新の研究成果や科学技術で綿密に構成されていて非常に読みやすい。
あまりに出来がいいので、現実かフィクションかが曖昧になっちゃうのが難点ですが(笑)。
上下巻でボリュームがありますが、週末に時間をとって一気に読みます。そちらの方が物語に没入できるんですよね。
経営者本はすごい方々の考え方や気持ちの持ち方を得る「勉強」という位置づけですが、小説は「旅行」する感じ。すごくリラックスできるし、何も考えずにひたすら読みます。
なので、内容はほとんど覚えていなかったりします(笑)。
『株式会社シンプルウェイ』代表 阪口 あき子 さん
静岡県出身。大学在学中に起業を志し、結婚を機に移住した函館で起業。函館市の観光情報サイト「はこぶら」を運営。イカール星人のCMも話題に。
マンガ的表現を使ったコミュニケーション
夏目房之介の漫画学 筑摩書房発行 夏目房之介著
この本はマンガ的表現方法について分かりやすく解説されています。
マンガのコマ割りというのは、印象づけたいシーンや気持ちの盛り上がりを巧みにコントロールしています。これは「読みやすくするために」だけではなく、時に読みにくくしてスピードを遅らせたり、コマから飛び出すような表現方法を使うなどして、読み手へ巧みに印象づけます。
私が研究しているのは人工知能や、人間とコンピュータが触れ合うヒューマンインタフェースですが、ここで重要になるのが人とコンピュータのコミュニケーションなのですがこれが難しい。
コンピュータなのだから淀みなく空気のような存在が一番なのですが、そればかりだと印象づけられません。そこで、マンガ的表現を理解し、それを応用したいと考えています。コミュニケーションには表現力が必要で、それにマンガ的なものは非常に有効だと思います。
『公立はこだて未来大学』教授 角 康之 さん
神奈川県出身。博士課程修了後、ATR研究所を経て、2003年に京都大学情報学研究科の准教授を勤め、2011年に、公立はこだて未来大学の教授に就任。
幸せとは何かを探る1冊
HAPPIER 幸福の科学出版発行 タル・ベン・シャハー著 坂本貢一訳
「人はどうしたら幸せになれるのか」という、誰もが思う永遠不滅の問いに、わかりやすく答えてくれる今1番お薦めの本です。
サブタイトルは「成功も幸福も手にするシークレット・メソッド」。8人のゼミから数年で800人の講座となった、ハーバード大学の心理学の授業がもとになっています。
「すべての人は幸せになるために生まれてきて、生きている」「人を幸せにすると自分も幸せになる」。この本には、幸せについて私が日頃から漠然と考えていたことの裏付けがありました。多くの人は、今楽しまずに頑張れば、未来に幸せがあると思いがちです。しかし、著者は今と未来、両方の幸福感が満たされるのが「至福型」と説きます。
手にしているこの本は、実は人に贈るために購入した新品です。自分用の1冊には、たくさんの線と書き込みがあり、読み込んでカバーも取れてしまいました。
『有限会社みのり』代表取締役 加藤 進 さん
本誌広告でもおなじみのIT企業「有限会社みのり」代表。本業のほか、ホテル経営や、“加藤進方式”と謳ったアパート経営でも注目されている。
本当の「赤毛のアン」に出会える1冊
赤毛のアン 集英社発行 L・M・モンゴメリ著 松本侑子訳
この本は、松本侑子さん翻訳による集英社文庫版の「赤毛のアン」です。
アンといえば、NHKのドラマにもなった村岡花子さんの翻訳が有名ですが、それ以外の訳もいろいろ出ています。なかでも松本訳は、物語の背景を訳者自身がインターネットを使って綿密に調べ上げ、解説しているのが特徴です。児童文学、少女小説と思われがちな「赤毛のアン」は、実は聖書やシェイクスピアなど古典文学からの引用、かけ言葉などが多く埋め込まれた、大人用の小説だったのです。それらを1つひとつひも解きながら、原文に忠実に、村岡訳では省略されていた場面まで、全文を訳しています。
訳注とともに読み進めると、物語の背後に広がる世界、これまで知られていなかった本当のアンに出会うことができるでしょう。あとがきにある訳者の翻訳家庭の話は、その次に続く著作へと展開していきます。
『公立はこだて未来大学』教授 美馬 のゆり さん
電気通信大学、ハーバード大学大学院、東京大学大学院で学ぶ。公立はこだて未来大学教授。日本科学未来館では副館長を務めた。昨年6月よりNHK経営委員。